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森脇靖通信 2号
雨の多かった16日間の会期を終え
ふと庭に目をやると、ある変化に気付いた。
昨春、裏の林から庭に移した木々が
その幹の太さをぐんと増していたのだ。

 敷地内に敷かれた石はつややかに濡れ
 樹の葉からこぼれる雫が音をたてていた。
 一度として同じ調子などない。
 時折、草木が風を切る音、鳥や虫の声も混じる。
 展示室での会話の合間に
 そんな季節の気配がふっと入り込む。

 この環境に生きる自分。
 自分の手の中で形を成した器。
 そして、それを手にしてくださる方。
 皆が目の前の自然に包まれたように感じた。

 今ここにいる自分は、
 一度しかない物事の積み重ねのうえにいる。
 とらえることができるのは今という瞬間しかない。
 今、耳にする音。目にする物。
 今、交わされる言葉。沸き起こる感情。

 今を繋ぐことで自分の中の時は重なり、
 そこで初めて自分を振り返ることだけができる。
 過去に戻ることも、
 一足飛びの未来なんていうこともあり得ない。

緑の奥から蝉の鳴声がきこえてくる。
深呼吸して、向かう。
今を生きる自分を信じて。


              2011年7月 森脇靖

| 森脇靖通信 | 22:36 |