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形を超えて            2013/08/01/
足が止まりました。
この茶碗を目の前にしたとき、胸が熱くなり
私はある衝動に駆られたのです。

この茶碗を作った人に会いたい。

その人は今、この世には存在しません。
話をしたくても出来るはずもありませんが
私は眼前の器に心が震え、それが出来るのではないか、
その人の温もりに直接触れることが出来るのではないか、
という想いに至ったのです。

その茶碗は銘が美濃という井戸茶碗でした。

諸説ありますが
井戸茶碗はその昔朝鮮半島で庶民のために作られていた雑器であり
それが日本に渡り茶人により茶碗として見立てられたものだそうです。
400年以上も前の事です。

美術館で茶碗を鑑賞していた私は
どんな技法で、どんな焼成方法で、と、
作り手であるがゆえに、そんな事ばかり考え
一点一点見ていたように思います。
しかし、この茶碗を目の前にした自分には
そのようなことを通り過ぎて
何百年も前に生きた一人の陶工の心持、生きざまに
想いを馳せていました。
当然のことながら、作り手である自分は
この陶工が持つ、神憑り的に卓越した技法や技術にも
目がいくのですが、
私はごく普通の感覚で、
名もなき陶工の性格や背格好、生活や趣味を、
勝手に想像し始めていました。

器と人が
物と生物という形を超えて何かの関係に至る
という経験を、初めてしました。

| 森脇靖日記 | 14:34 |